ウクライナの気候区分

ロシアがウクライナへ軍事侵攻を始めてから2年。麦やトウモロコシ、ヒマワリ油などの生産地として「世界の食糧庫」とまで讃えられた肥沃な大地は、東部南部のいたる所で砲弾の穴が開き、戦車で無惨に踏み荒らされています。
ゴーゴリやチェーホフ、ムソルグスキーなどの歴史的芸術家を生み、文化・教養の面でも豊かなこのボルシチ発祥の地は、この先どうなっていくのでしょうか。
豊富な資源を有する覇権主義国家の剛腕にねじ伏せられてしまう。あるいは命を賭して戦うウクライナの兵士らが国土を守り抜き、青と黄の二色旗を隣国に向けて高らかに掲げる日が訪れるのでしょうか。
人命を駒をして扱う「戦争」というこの人類史上最悪の悲劇を、遠くの日本に住む私はどうとらえていいのか分かりません。銃弾が飛び交う地獄のような戦場に、日本のアニメやゲームで育った若い兵士もきっといます。「戦争なんてしたくない」。報道で戦地の様子を目にする度に、そんな押し殺した声が映像の向こうからこだましてくるようで、胸が痛くなります。

ウクライナには四季がある

ウクライナの広大な国土は場所によって気候が異なりますが、南部地域は総じて温暖です。日本と違い夏は北西風、冬は南西風が卓越します。近年は地球温暖化による気候変動で、猛暑や寒波、大雪、洪水など、極端な現象がみられようになってきました。
季節的な特徴といえば、主に初夏から夏の時季に「スホベイ」と呼ばれる乾燥した熱風が吹くことがあります。ウズベキスタン、カザフスタンなどの中央アジアの砂漠地帯から吹いてくる東寄りの風で、気温が40℃近くにも達することがあり、干ばつによる農作物の被害や皮膚の乾燥、呼吸器系の疾患など健康被害の原因にもなります。ちなみにスホベイ(Sukhovei)は、ウクライナ語で「乾燥した」という意味です。

春(3月から5月
少しずつ温暖になり冬の寒さから解放される時季です。植物は芽吹き、色とりどりの景色が広がります。天気は変動しやすく、時々雨が降り、気温が激しく変化します。

夏(6月から8月)
全般に温暖で暑くなります。最も気温が高いのは7月8月で、たまに雷雨が発生して暑さを和らげます。温暖湿潤気候や地中海性気候の黒海沿岸を含む南部地域では気温が高く乾燥します。

秋(9月から11月)
日照時間が短くなり気温は徐々に低下、冬に備えて木々が色づきます。南部で降水量は夏に比べて増え、朝霧が発生するところも。

冬(12月から2月)
地域によって寒さのレベルが異なります。西部や中部では雪が積もり冬景色が広がります。東部地域ではさらに低温になり極寒で積雪量も増えます。
一方、南部の海岸沿いやクリミア半島では、気温が氷点下まで下がらないところもあり、比較的穏やかな冬になります。

ウクライナの気候区分

北部と西部、中部は青系の色で表示された冷帯湿潤大陸性気候(Df)で、夏は暑く冬は氷点下まで気温が下がり、四季の変化があります。降水量は日本の約3分の1から2分の1程度。南東部は比較的乾燥したステップ気候(BSk)です。クリミア半島は南部と沿岸部で比較的温暖な温暖湿潤気候(Cfa)。また図には表示されていませんが、黒海に面したオデーサ、ミコライウ、サポリージャの一部は地中海性気候(Cs)の影響があるようです。
雨量はカルパティア地方(リビウを含む西部エリア)で多く、年間1200~1600ミリ。最も少ないのは東部で300ミリ程度です。南部では給水制限を伴う深刻な水不足に見舞われることもあります。
(注)本ページでは国際的に広く使用されているケッペン・ゲイガーの気候区分を基本に説明しています。狭いエリア(小気候)の分類に不向きとされる区分法なので、図はざっくりとしたエリア分けと捉えてください。

各地の気候

ウクライナの首都「キーウ」の平均気温は北海道・小樽市に似ています。ただ日本最北端の北海道・稚内より北緯で5度ほど北の内陸部(北緯約50度)に位置するため、小樽よりも冬の冷え込みと夏の気温上昇が極端です。冬は氷点下15℃前後まで下がる日があり、夏は35℃近くまで上がることも。降水量は年平均で約600ミリ。小樽(約1200ミリ)の半分ほどで多くありません。冬は雪が降り、積雪の記録では1940年に84センチ(過去最高)が観測されています。


ウクライナの南東部、ロシアに近いところに位置する「ルハンスク(ルハーンシク)」は、キーウよりさらに気候が極端です。ウクライナにおける過去の最高気温と最低気温は、ここルハンスクで記録されています。最高気温は2010年8月12日に42℃を観測、最低気温は1935年1月8日に氷点下41.9℃が観測されました。夏は猛暑、冬は極寒になる傾向があるようです。年間降水量は約500ミリ。東京の約3分の1と降水量は少なめです。

中世ヨーロッパの街並みがそのまま近い形で残るウクライナ西部「リビウ(リヴィウ)」は、世界文化遺産にも登録されている美しい街です。1年間の気温傾向はキーウに似ていますが、降水量は年間約760ミリとウクライナ中部や東部に比べて多めです。リビウの南に接し小リビウと称されるイヴァーノ=フランキーウシクのカルパティア山地ではウクライナにおける月間降水量の最高値(580ミリ、1969年6月)を記録しており、ウクライナの積雪の最高記録(352センチ、2006年3月25日)もイヴァーノ=フランキーウシクで出ています。このようにウクライナの中でも西部は降水量が多い地域です。

ウクライナ南部のクリミア半島でセヴァストポリに次いで2番目に大きい都市「シンフェロポリ」は、キーウよりも温暖で夏の時季は最高気温が35℃を超える日もあります。年間降水量は約500ミリと少なく東京の3分の1以下です。降水が最も多いのは6月ですが、雨季は12月から3月で各月、半月ほど雨が降ります。


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