2025年は大西洋でハリケーンが平年より多く発生する見込み(NOAA)

【2025年5月22日 NOAA(アメリカ海洋大気庁)発表を参考】

 NOAAの国立気象局(NWS)の予報官によると、今年の大西洋でのハリケーンの発生は例年より活発になるとの見通しです。 

2024年10月8日、NOAAのGOES-16衛星が撮影したハリケーン・ミルトンの画像

大西洋のハリケーンのシーズンは毎年6月1日から11月30日までと定義されています。今年のシーズン中のハリケーンの発生数について、平年並みになる確率が30%、平年を上回る確率は60%、平年以下となる確率は10%と、予報官は予測しています。

具体的には、名前がつけられる熱帯低気圧がトータルで13〜19個発生し、そのうち6〜10個がハリケーンに発達、またそのハリケーンのうち3〜5個はメジャーハリケーンになる見込みです。NOAAはこの予測の信頼度を70%としています。
ちなみに平年の発生数(30年平均)は、名前がつけられる熱帯低気圧が14個、そのうちハリケーンになるのは7個、メジャーハリケーンは3個です。

【解説】
NOAAはシーズン中における「ハリケーンの活動度」を以下の3つの主要な指標で評価しています

①名前がつけられる熱帯低気圧の数(Named Storms)
最大風速が39マイル毎時(約17.5m//s)以上の熱帯低気圧
(最大持続風速が約17.5m/sを超えた熱帯低気圧には、事前に定められた命名リストから順番に名前をつけるようにしています)

②ハリケーンの数(Hurricanes)
最大風速が74マイル毎時(約33.1m/s)以上の熱帯低気圧

③メジャーハリケーンの数(Major Hurricanes)
カテゴリー3以上(最大風速が111マイル毎時(約49.7m/s以上)のハリケーン

「NOAAと国立気象局は、最先端の気象モデルとハリケーン追跡システムを活用して、アメリカ国民にリアルタイムの暴風雨の予報と警報を提供しています」と、ハワード・ラトニック商務省長官は言います。「これらのモデルと予報ツールにより、ハリケーンシーズンへの備えはかつてないほど万全です」とも。 

NOAA代理長官のローラ・グリム氏は、「去年、私たちはハリケーン・ヘレンとデビーによって内陸部の大規模な洪水を目の当たりにしました。それと同様に、ハリケーンの影響は沿岸地域をはるかに超えて広がる可能性があります」とコメントしています。「NOAAは早期かつ正確な予報と警報の発信に重要な役割を担い、人命と財産を守るために必要な科学的専門知識を提供しています」 

NOAAの大西洋ハリケーンシーズン予測に基づくハリケーンシーズンの発生確率と命名された嵐の数を示す概要。 (画像:NOAA NWS)

NOAA予測のベース

今シーズンは、海水温が例年より温かいことや大西洋ハリケーンの主な発生源となる西アフリカモンスーンの活動が活発化する可能性があることなど、複数の要因が重なって、平年より気温が高くなると予想されています。これらによって熱帯低気圧の発生が促進される傾向が見えてきました。 

大西洋では、海の熱量が高く貿易風が弱まるなど、活発な活動が続いています。熱量の増加は熱帯低気圧の発達に必要なエネルギーを増やし、一方、風が弱いということは、つまり熱帯低気圧の発達が妨げられないことを意味します。 

また、今シーズンは、西アフリカモンスーンが北上して熱帯波が発生する可能性があります。熱帯波によって、熱帯低気圧のいくつかは非常に強い勢力となり長く持続(長寿命)します。

「国立気象局に勤務して30年になりますが、気象監視にこれほど高度なモデルや警報システムを導入したことはかつてありませんでした」と、NOAA国立気象局長ケン・グラハム氏は言います。「今回の予測は、みなさんへの行動を呼びかけています。備えを怠らないでください。嵐の脅威が迫る前に計画を立て、物資を調達し、万全の態勢を整えましょう」

ハリケーンの分析と予報が改善

NOAAは今シーズン、予報の伝達、避難準備の支援、そして嵐からの復旧活動を強化します。具体的には以下のとおりです。

・NOAA のハリケーン解析予報システムモデルをアップグレードし、追跡と強度の予報が5%向上します。これにより予報官がより正確な監視と警告を提供できるようになります。

・NOAAの国立ハリケーンセンター(NHC) と中部太平洋ハリケーンセンターは、高潮や熱帯低気圧の強風が陸地に到達する72時間前までに熱帯低気圧注意報を発表します。これにより、地域住民は嵐への備えをより早く取り組めるようになります。

・潜在的な熱帯低気圧の危険性を事前に通知するNOAAの気候予測センターの「世界熱帯災害情報」の予報期間が2週間から3週間に延長されました。これにより、準備と対応のための猶予時間がさらに長くなります。

世界気象機関(WMO)が選定した、2025年大西洋ハリケーンの名前のアルファベット順リスト。(画像:NOAA NWS)

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