オーストラリアのサイクロンについて

■オーストラリアのサイクロンシーズンはいつ?
オーストラリアのサイクロンシーズンは11月から4月までだが、11月の発生は非常に少ない。

熱帯低気圧に関する信頼度の高いデータが入手可能になった1970年代以降、シーズン中最も早く被害を出したサイクロンは、1973年11月21日に北キンバリー海岸を通ったサイクロン「イネス」だった。
一方、シーズン中最も遅く発生したサイクロンは、1988年5月21日にココス諸島近くで発生し、シャークベイを通過したサイクロン「ハービー」である。
インド洋のはるか西のエリアでもサイクロンは一年中発生するが、冬期の発生頻度は非常に低い。

■サイクロンの発生数は?
オーストラリア地域(東経90度〜160度)では、1シーズンに平均で約11個のサイクロンが発生し、そのうち約半数は西部地域で発生している。1シーズンの約11個の半数は非常に危険なレベルにまで発達し、約25%が西部と東部域に上陸、80%が北部域へ上陸する。

■熱低低気圧(サイクロンの卵)の傾向
オーストラリア地域の熱帯低気圧の発生は、特にエルニーニョと南方振動の変動によって影響を受ける。一般的に、ラニーニャ現象が発生する年は比較的多くの熱帯低気圧が沿岸地域に上陸し、逆にエルニーニョ現象が発生する年は少ない。

上の熱帯低気圧の気候地図は、エルニーニョ発生年、ラニーニャ発生年、中立年など全てのデータを集計して、オーストラリアおよび周辺水域の、平均的な熱帯低気圧の発生数を示したものである。この地図からポートヘッドランドの北部で発生頻度が最も高いことが分かる。

熱帯低気圧のデータ分析は時代によって観測方法と技術が異なるが、徐々に精度は向上している。気象衛星の改良により、熱帯低気圧の検出能力が上がり、かつては熱帯低気圧と誤って命名されたモンスーン低気圧なども区別できるようになった。特に大きな精度改善の後押しになったのは、1970年代後半に赤道上空の静止衛星からの衛星画像が定期的に入手可能になったことである。

■熱帯低気圧の発生数は減っている?
オーストラリア地域(赤道の南側、東経90度〜160度)において、熱帯低気圧の活動を分析した時系列データでは、一見、熱帯低気圧の総数は減少しているようにみえる。だがこれは、1978年に熱帯低気圧の定義が変更され、それまで熱帯低気圧に分類されていた一部が亜熱帯の現象として分類されるようになったためで、実際には低気圧自体の発生数は減少していないと考えられる。

1970年/71年以降、オーストラリア地域で発生した非常に強力な熱帯低気圧とそうでない熱帯低気圧の数を示した図

強い勢力の熱帯低気圧の発生数については、発生頻度に変動があり、少ない期間と多い期間に分かれる。1979年以降は衛星による継続的な観測で正確なデータを取得しているが、それ以前のデータは信頼性が低い可能性がある。

■将来はより強力な熱帯低気圧が出現?
地球温暖化が進み熱帯低気圧が発生する環境が変化している。熱帯低気圧の発生数や強さの予測は不確実性があるものの、気候モデルの計算では、将来はオーストラリア地域で熱帯低気圧の数は減少し、一方で強い勢力のシビアな現象(風が強く降水量が多い)が増える傾向が示されている。

熱帯低気圧は風による被害だけでなく、大雨や洪水による被害も引き起こす。過去には熱帯低気圧に伴う大雨で大規模な洪水が起きた事例もあることから、今後増えるであろう大雨には警戒しておく必要がある。

(本文はオーストラリア気象局のウェブサイトを参考に記述。画像は同局のウェブサイトより)

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