台風は巨大な雲の渦巻き
台風をひと言で表現すると「巨大な雲の渦巻き」だ。
発達した雨雲が中心に向かって次々と巻き込まれていく。その構造は複雑で常にダイナミックに変化している。台風の雲を側面から見たのが下の図である。
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台風の目は壁のような背が高い雲(壁雲・かべぐも)に囲まれている。さらにそれを取り巻くように積乱雲が回転している。
風の吹き方も複雑だ。台風の目の中は回転しながら上に吹き出る風が吹いていて、その内側は下に向かう風が吹いている。また台風の周囲は反時計回りに風が吹き、その風に流されて雲が大きく回転している。
台風の本当の形
台風の形は、実際には上記のようなキノコ状ではない。縦横比を見てみよう。
台風の雲の高さは10キロから15キロメートル。これは富士山の3倍から4倍の高さになる。それに対して横幅は直径1000キロほど。富士山を中心に北は岩手県、西は広島県までの広さになる。
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この比率を物に例えると、CDやDVDディスクと同程度の扁平な形だ。
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宇宙から撮影した写真を見ればわかりやすい。
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台風は、富士山の何倍もの高さの雲が広範囲に並んでいる。その様子を横から見たイメージが下のイラストだ。台風の端にある小さく見える雲も富士山より高い。
ちなみにジェット機が飛ぶ高さは上空約10キロ。流れ星はその10倍、上空約100キロである。
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台風が反時計回りで回転する理由
では、なぜ台風の雲は反時計回りに回転をしているのか。
理解するための第一歩として、地球上で動くモノには全て、自転による目に見えない力が作用していることを知っておく必要がある。
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北半球では、自転の影響で、動くモノは全て進行方向に向かって右に動く力が働いている。サッカーボール、走る人、飛行機、風など全てである。
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例えば乗り物がないメリーゴーランドを自転する地球に見立ててみよう。左向きに回転しているとする。この上を濡れた靴で中心から外側に向かってまっすぐ歩くと、足跡はどうなるか?
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まっすぐ歩いたはずなのに、足跡は右のほうに曲がってしまう。つまり、地面が回転していることで、知らず知らずのうちに右に動かされているわけだ。
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野球のキャッチボールやビーチボールでも、それぞれのボールにはこの「右に動かす力」がかかっているが、地球が自転するスケールからすれば非常に小さい動きのため、その影響は人が気づかないくらいに小さい。
一方で台風のように100〜1000キロ規模の風や雲の動きに対しては、右に動かす力は目に見えて大きく作用するようになる。まずはこのことを知っておこう。
風が右に動いて渦巻きになる
台風は「ひとつの巨大な雲」というわけではない。多くの積乱雲がまとまって台風を構成している。
この積乱雲のひとつに注目すると、積乱雲の中では強い上昇気流が発生している。下から上へと空気が移動していて、それが上へ上へと雲を発達させている。
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では積乱雲の下では空気の動きはどうなっているのかというと、積乱雲の中の上昇気流を補充するために、周辺から空気を吸い込んでいる。つまり積乱雲の下は周りから空気がどんどん集まってきているのである。
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ここで、この空気の動き(風)に対して、目に見えない「右に動かす力」が働く。
積乱雲が集まっているエリアを目がけて移動してきた空気(風)は、少しずつ右にずれながら積乱雲群に向かうようになる。やがて空気は反時計回りの風(左巻きの風)になって、中心に向かうようになる。そして積乱雲はこの風に流されて、次第に渦巻き状に並び始める。台風の発生だ。
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南半球では時計回りに回転する
目に見えない「右に動かす力」のことを、発見者の名にちなんで「コリオリの力」という。
コリオリの力は北半球ではモノを右に動かすように作用したが、南半球では左に作用する。全て逆になることを知っておこう。
つまり南半球のオーストラリア付近で発生するサイクロン(台風と同じ仕組み。呼び名が違うだけ)は、反時計回りではなく時計回りに回転する。
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蛇足だが、バスタブのお湯の栓を抜くと、北半球では反時計回り(左巻き)に渦ができて、南半球では時計回り(右巻き)に渦ができるという話を時々耳にする。コリオリの力を説明するための話のようだが、これは間違いである。
先に説明した野球のボールやサッカーボールの話のように、地球規模のような大きな動きに対してコリオリの力は目に見えて現れる。お湯の流れにもごくわずかなコリオリの力は働いているが、渦巻きの向きを左右するほどのものではない。実際に、北半球と南半球のバスタブの中で確認できたとしても、それは単なる偶然である。
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